大坪さん(奥)から指導を受けながらコースを走る記者

 激しく競い合うより、体を動かすこと自体を楽しむ―。そんな趣旨のニュースポーツは近年、五輪に加わる種目も増えるなど注目が高まる。初心者が体験できる広島県東広島市内の施設を記者が訪れ、魅力を探った。

 同市黒瀬町の国道375号から少し車を走らせると、木や草が茂る中にオフロードコースが見えてきた。「世高屋ベース」代表代理の大坪明博さん(58)が、爽やかな笑顔で迎えてくれた。1997~99年に自転車BMX全日本選手権を連覇したレジェンドだ。同市高屋町のコースが改修中のため、黒瀬町のサブコースを案内してくれた。

 「肘、膝を柔軟に使い、全身でこぐ競技なんですよ」。大坪さんはストレッチをしながら教えてくれた。自転車をこぐのに、脚以外をどう使うのか、想像できない。

 コースは1周約150メートルで、最大15メートル差の起伏がある。実践するも、車体が浮く度、立ち止まってしまう。大坪さんは、そんな私を見て「まずは1周完走するところから始めましょう」

 起伏を乗り越えるこつは、下りの勢いをうまく使うこと。大坪さんはペダルを一度も使わずに起伏を次々と越え、完走した。軽やかな姿を見て、自分は恐怖心で体が固まっていたのでは、と気付く。「もっと力を抜こう」。そう言い聞かせて続けていると、気付けば起伏やカーブを楽しめるようになっていた。

 大坪さんは、けがで選手を引退してから約20年間、県内で選手の育成やコース造りに力を入れてきた。2018年の西日本豪雨で同市河内町の自宅と周辺の自転車コースが流されたが、諦めななかった。「米国のように日本人にとっても自転車競技を身近なスポーツにしたい」との思いがあるからだ。

 私が上達したのも、底抜けに明るい大坪さんの性格が、競技を楽しませてくれたからなのかもしれない。大坪さん☎08063191683。(岩井美都)